事業設計から会計を考える

会計

こんにちは、ブランカです。
年度末が近づき、ブランカのBPO部は経理キャストが大活躍です。そんな中、先週「1年分の証憑を溜めてしまいました。すぐになんとかしたいです!」という案件が持ち込まれました。

事業者さんによると、スタートした時には初年度からこれほど取引が増えるとは想定していなかったので「年次決算の時にすればいいや」と思っているうちに、1年分の証憑が溜まってしまったそうです。

ダンボール箱いっぱいに投げ込まれた領収書、見積書、請求書、納品書、契約書など、大量のドキュメントを前に、とても申し訳なさそうな声でお電話くださいました。

大丈夫です。ご安心ください。確かに、証憑の量は多いですが、私たちにとっては、とても進めやすい仕事なのです。

「取引実態がすでにあり、仕訳が確定していない」というタイミングは、成長戦略に直結する会計のしくみを創るのに最適です。

私たちはまず、経営メンバーからヒアリングをして、会社のMVV、具体的な取引、中期的な取引の見通しをキャッチアップし、仕訳の設計図を創っていきます。

経営と営業の実体に合致した会計のしくみは中長期的な業績伸長に直結します。ポイントを解説したので、ぜひご一読ください。

会社の部門仕訳をどう創るか

会社の中の仕事は、営業や宣伝など花形部署の活躍に注目が集まることが多く、総務、法務、財務経理といったバックオフィス部門の仕事はあまり目立たない存在かもしれません。

しかし、バックオフィスの責任者を長く経験した私は、管理部門の仕事はとてもクリエイティブでダイナミックな仕事だと思っています。

バックオフィスをしっかりと整え、経営実体に合ったフローを作り、的確な運営を行えば、営業期間に比例して強い組織ができあがり、人が育ち、業績が着実に伸びていくのです。

売上伸長の基本となるのは「営業と会計の連携」です。

中長期的な営業実体に合わせて会計を行えば、短期的な事業計画を立てやすくなります。経営者と管理監督者、現場の社員まで、同じ仕訳を使うので、職域・職位にかかわらず、すべての社員が経営に参加できるのです。

また、営業部門と会計担当者が使う勘定が同じであれば、役員や管理監督者からの経営指示が現場に伝わりやすく、現場取引から起きる経理作業がシンプルになり、予実を取りやすくなります。目標数値に対する結果がいち早く経営に上がってくれば、経営判断を現場へ伝えるスピードも速くなります。

部門

まず、0→1で創業した当初は、売上のすべてを1つの部門と考えて良いです。最初から細かく分けても、営業実体につれて取引が変わっていきます。なので、最初は部門を分ける必要はありません。

取引が増え自社の強みが分かってくれば、部門仕訳を考えていきます。

業態で部門を分ける

販売メニューが複数ある場合、業態で部門を分けます。分け方はシンプルに「いずれ部長職を充てて運営する部門」と考えましょう。部門とは、たとえば「製造業」「代理店業」「運送業」「小売業」などです。

部門間取引

経営実務の観点では、「部門間での取引」と考えると運営しやすくなります。たとえば「製造した商材を販売部署に卸す」「営業部が受注した案件を工事部門が施工する」という考え方です。

会計のしくみを整えることで、互いの数値に関心をもちやすく、業績を管理しやすくなります。社員一人ひとりが「会社のどんな利益にかかわっているのか」を自覚しながら業務に取り組むことができれば、日々の活動につれて必要十分な仕事が生まれ、売上や業績伸長を主体的に担ってもらえるのです。

子部門

部門の中で「商流」と「利益率」の異なる取引を「子部門」とします。

制作会社であれば「システム開発」「CRM」「広告運用」、自動車販売であれば「新車」「中古車」といった分け方です。

このようにすれば、営業メンバーは利益を考えやすく、経理部門は会計を行いやすく、経営は組織を強化しやすくなります。すべての職位の人が自分が何に貢献しているかを感じながら業務を遂行している状態です。ポジションに対する業務の内容が明確な状態で業務が行われるので、欠員が出た時に採用したい人材の要件定義をを行いやすく、採用された新メンバーも業績を出しやすくなります。指導役の上長・新メンバーともに互いの業務に満足し、チーム運営が円滑になり、他部署との連携ムードを醸成しやすくなるのです。

月次試算表は翌月5営業日以内で

会計仕訳と各部署のルーティンを、月末締めから5営業日での月次試算表確定を行えるようにしましょう。

試算表を作成していない会社、作成していても数か月遅れている会社、融資申請など必要な時にだけ試算表を間に合わせる会社は、社長やトップセールスマンがプレイングマネージャーとして頑張っています。業務は属人的になり、大きな売上や責任を担っていた人が退職すると、それに続いて数名が退職してしまうことも。

その解決方法のひとつは、「この人にしかできない」「この人がいないと回らない」という状況をなくして、現場からマネジメント層までの業務に再現性をもたせることです。

再現性のある業務フローを策定すれば、部下は上長の仕事を見ながら成長し、代理をつとめ、やがて自身が上のポジションを担うようになります。そうすれば、人の入れ替わりにも即座に対応できるのです。誰かが異動や退職する時にも、その人がしていた仕事が見えているので、不安や混乱は起きにくく、新しく入社する社員に仕事を分け与え、教育しながら成長することもできます。

このような、モチベーションを高く維持する組織では、離脱が起きにくくなるのです。

競う相手は市場です。会社規模や売上高の大小ではありません。お客様の役に立ち、選ばれる社風・サービスを続けられるかどうかです。

事業のスタートラインでビハインドする必要はありません。業務の現場が常に整備されて、トレーニングを怠らず、社員同士がリスペクトし合い、自社に誇りをもち、取引先とお客様を大切にする社風を醸成できていれば、社員の頑張りにつれて業績が上がってきます。

「周りの人がしている仕事が見えている」「自身もその仕事をやってみたいと思う」その基本を構成するのが「会計」なのです。仕事が見え、数字が見え、自分の頑張りを上司がさらに生かそうとしてくれる組織では、社員が相互に期待に応えようと頑張ってくれるのです。その基盤となるのが、会計なのです。

経営会議は翌月10営業日以内に実施を

月次試算表を迅速に出せることと同じに大事なことは、経営会議を翌月10営業日以内に実施することです。

経営者の仕事の一義は、概況を的確に把握し、現場が業績を出しやすいように環境を整え、取引の可能性を拡げる活動であるといえるでしょう。もちろん、経営者自身が成したい業績を社員に指示することも大切ですが、社員が担う業務の延長に売上があるのだということを第一に考えなければなりません。

「経営判断」は、会社の代表もしくは同等のポジションにいるメンバーだけにできる仕事です。経営には大きな責任が伴います。ボードメンバーによるガバナンスを維持し正しい経営判断は、洗練された会計体制と正確で迅速なデータ供給に支えられるのです。

営業と会計が掲出するデータをもとに経営判断を行うのが経営会議です。翌月10日以内に経営会議を実施し、その後すぐにマネジメント層と協議を行えば、マネジメント層から現場へいち早く指示を出してもらえます。社員からみると、社員が頑張った結果をもとに会社が自分たちのために素早く働いて、仕事をしやすくしてくれるのですから、現場のやる気がさらに高まるのも当然のことでしょう。

まとめ

  • 営業実体を会計に反映する
  • 部門、子部門を創る
  • 翌月5営業日以内の月次試算表作成
  • 翌月10営業日以内の経営会議実施
  • 業績の伸長は洗練された会計から