人材サービスを運営するパーソルキャリア株式会社が社会人15,000人に対して行った調査によると、「副業をしている」と答えた人は8.2%、「検討中」と答えた人は18.4%でした。この結果から「社会人の10人に1人は副業をしており、5人に1人は副業をしたい」ということが分かります。
企業の人材不足が顕著になり、副業を容認する意向をもつ会社が増えるいっぽう、実際に副業している人は1割弱にとどまります。今回のコラムでは、幾つかの調査結果を参照し、企業が有用な人材を副業で活用するポイントを紐解いてみましょう。
副業をしている人の副業月収は平均5万円
パーソルキャリアの転職サービス「doda」の調査によると、副業の月収で最も割合が多いのが1万円未満で29.1%、次に多いのが10万円以上で15.9%、3番目に多いのが1万円台で15.4%でした。
年代別で見ると、20代・30代の平均は3万5千円前後なのに対し、40代は平均6万5千円となり、3万円近く高くなっています。全体の平均額は5万1,218円で、年代による差はあるものの、副業の平均月収は約5万円となりました。
副業をすると本業のモチベーションが上がる
パーソルキャリアが運営する人材サービス「HiPro(ハイプロ)」による2023年9月調査では、57%が「副業をすると社員のモチベーションが上がった」と回答。その理由として「新しい視点が生まれた・視野が広がった」「役立つスキルや生産性の向上に繋がった」「新たな成果を生み出せた」「経験が増え自信がついた」「人脈が増えた」といった回答が上位を占めています。
さらに、この調査では、55.1%が「副業をすることが本業に良い影響を与えている」と回答。55.5%が「副業を続けると本業に対するやりがいやモチベーションは上がる」と感じ、転職を検討していた約3人に1人が「転職を思い留まった」ことが明らかになっています。
企業の副業容認率は60%超、副業実施率は微減
上図のとおり、企業の副業容認率(全面容認+条件付き容認の合計)は、2018年の調査以降、上昇トレンドになっています。副業容認率が最も高い業種は「宿泊業、飲食サービス業(78.4%)」で、21年調査から11.8pt上昇。前回からの上昇幅が最も大きい業種は「金融業、保険業」で、21.3pt上昇しています。
副業容認理由は「個人の自由なので(58.4%)」が最も高く、21年調査から4.5pt上昇。続いて「従業員のモチベーション向上」「優秀な人材の確保・定着」が挙げられています。
企業の副業受入れ率は24.4%。21年調査から変動がなく、副業容認率とのギャップが目立つ結果となっています。
副業受入れ率が最も高い業種は「医療、介護、福祉(45.4%)」、次いで「宿泊業、飲食サービス業(39.2%)」です。副業受入れ理由として、「迅速に人材確保が可能だから(25.4%)」が最も高く、次いで「多様な人材確保が可能だから(21.3%)」「高度なスキルをもった人材確保が可能だから(18.3%)」が続いています。
いっぽう、正社員の副業実施率は、18年の調査以降、微減トレンドです。性別では女性、年代では20~30代での副業実施率がやや高く、職位別では「部長・本部長相当」の実施率が高いデータが出ています。正社員の副業意向率も21年調査から変動せず、 副業実施率とのギャップは大きいままです。
副業をしていない理由として、「募集内容が自分の希望やスキルに合っておらず、応募を控えてしまう(29.7%)」と「本業が忙しく時間が無い(29.7%)」が最も高く、コロナの影響が落ち着いてきた結果、テレワーク実施率が下がっていることも影響していると思われます。
また、「金融業、保険業」に勤める副業意向者は、「会社の副業許可の条件が厳しい」「会社の副業に関する手続きが煩雑」であるため、副業をしない割合が多い傾向が出ています。
地方企業の7割弱が人手不足。都市部の副業人材に期待
地方では65.1%の企業が人手不足に陥っており、地方での副業に関心を抱く正社員は半数以上です。都市圏勤務の副業意向者における地方副業の関心度をみたところ、55.3%が「関心あり」、地方出身の副業意向者における“ふるさと副業”の関心度をみると、69.6%が「関心あり」と回答しています。
副業不採用者に「もったいない」意識を感じる企業はおよそ4割
副業募集の枠に対して応募者の数が多い場合、不採用の人に対して「もったいない」「別の求人内容であれば採用したい」と感じる企業はおよそ4割。そして、不採用になった後もその会社を受ける可能性のある副業人材は、およそ5.5割にものぼります。副業人材を募集する企業と志望する副業人材の相性は良いといえるでしょう。
副業する人はリモートワークで仕事をしている
本来業務の空き時間にオフィスワークの副業を行う場合、発注元の事業所へは出向かず(*1)、自宅やカフェ、シェアラウンジなどでリモートワークを行うのが一般的です。
企業側に必要となるのは、「リモートワークを前提としたワークフロー」と「受け入れ体制」です。「データのクラウド化」「ドキュメントのペーパーレス化」「リモートワークでのコミュニケーションツール(*)が浸透している」など、リモートワークに対応していて、副業人材を歓迎する社内体制を作ることが、有用な副業人材の獲得に有利になります。
(*1)経理・労務など出社を前提とした業務もあり、あらかじめ該当人材との間に客先出社を前提とした契約が交わされる場合があります。
(*2) ChatWork、Slack、Googleワークスペース、SFA、クラウドサイン、クラウド会計ソフト、クラウド勤怠管理 など
まとめ
副業を認める会社は6割、副業をしている人と検討している人は合わせて3割弱。新卒で社会人になった人の4割は副業をしたいと考えています。
副業の環境を整備すれば、企業は固定費なしで有用なマンパワーを確保できます。副業する人は視野が広がり、本業にも役立つスキルを獲得し、人脈が増え、自信がついて本業のモチベーションが上がるという、双方のメリットがあります。
働き方への配慮も必要です。副業人材にとって、副業はあくまでも「副業」。企業側が副業の希望やスキルに合った業務で募集し、過重な業務にならないようにするなど、取り組みやすい業務を提示する配慮が求められます。
コロナによるリモートワークにより働き方意識が変化した今は、企業が副業人材の活用により有用なマンパワーを得るための好機といえるでしょう。まずは、自社の社員が副業をしやすい環境を整え、副業人材のリモートワークに対応した社内業務のDX化を進めておきましょう。
出典:
パーソル総合研究所
第三回副業の実態・意識に関する定量調査(PDF)
転職サービス「DODA」
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Synagy Career
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