事業所移転が決まったら ー IT総務の8つのタスク

 事業所の移転が決まったら、IT総務は大忙し。移転先ですぐに仕事に取りかかれるように、準備には念を入れておきたいもの。だけど、何から手をつければいいのか―?そんなご担当者のために、ブランカ編集部は、事業所移転のフローを情シスのプロに取材してみました。


チームを組む


 まず最初に、事業所移転を自社の社員だけで行うのか、それとも移転専門業者にすべて依頼するのかによって、IT総務がすることは変わります。

 自社社員で行う場合は、IT総務がすべてのネットワーク機器を把握して、各業者と個別に打ち合わせをしながら、社内と社外へ指示を出します。移転専門業者が入るのであれば、IT総務は社内の情報を業者側の担当者げ受け渡し、指示を受けて各部門へ手配する形になります。

 まずは社内の移転責任者に各部署のIT担当を決めてもらい、ITチームを作りましょう。総務だけで大きな仕事を動かすことはできせん。社内でうまく分担してもらいましょう。


現オフィスの図面と機器を確認する


「図面」を手に入れる

 不動産業者が作った概略図ではなく、建築設計時に作成されたような等縮尺の図面が望ましいです。現在の事業所フロア図面のコピーを入手しましょう。

 等縮尺の図面は、現オフィスに入居した時の契約書類に付属している可能性があります。社内の法務担当に確認して、契約書を調べましょう。入居時に内装工事を行っておれば、工事の提案書や作業報告書に図面が付いているでしょう。

 もし、社内になければ、管理会社へ連絡して図面を送ってもらいましょう。

現在のレイアウトを図面に書き込む

 図面のコピーを入手できたら、現在のレイアウトと設置機器の確認です。デスクやキャビネットといった「什器類」を、およその等倍で書き込みます。

現在のパソコンの配置を書き込み、番号を振る

 次は「パソコン」です。各デスクに置かれているパソコンを図面へ記入し、番号を振ります。「北から南へ」「奥から手前へ」など、できるだけ一定の方向へ番号を振っていくと、後の作業がしやすいです。

パソコンとモニターの情報を集める

 各パソコン(ハードディスク/モニター)ごとに、集める情報は、
・種類(ハードディスク/モニター/モバイル)
・メーカー/型番/製造番号/社内備品番号
です。

 これらの項目は、経理部や管理部で「管理台帳」のような形で把握されている場合があります。まずは各部署へ問い合わせましょう。

 もし、これらが「管理台帳」に載っていなかったり、台帳では製造番号などの細部まで確認できない場合は、それぞれのパソコンを使っている社員に問い合わせて、パソコンやモニタに貼られているシール等を確認してもらい、画像やテキストで報告してもらいましょう。

メーカー、型番や製造番号が必要な理由

 ちなみに「どうしてメーカーや型番、製造番号が必要なの?」という問い合わせをいただくことがあります。これには2つの大きな理由があります。1つ目は、パソコンを特定するためです。2つ目は、移転先でパソコンをネットワーク機器と接続する設定を行う時に、ドライバのインストールなどの作業を迅速に行うためです。

 各パソコンについての情報がないと、作業が遅れたり、場合によっては社員の日常業務に支障が出ることがあります。また、移転の機会に機器が別の人に割り当てられることがあり、移転先で誰がどの機器を使っているかを会社が把握するためにも必要です。とても重要なので、しっかりリスト化していきましょう。


ネットワーク機器を書き込み、設定を確認する


 図面に、プリンター、FAX、コピー機、サーバー、WiFiモデム、電話モデムなどの「ネットワーク機器」を書き込みます。漏れがないように、フロアをいくつかの区画に分けて指差確認していくと良いでしょう。

 続いて、それぞれの設定を確認します。

 使っていない機器やサービスも、この機会に解約手続きを済ませれば、経費を削減することもできて一石二鳥です。同時に、移転先で必要な新しいサービスの契約予定もリストアップして、手続きのスケジュールを組みましょう。

 契約時、または購入時に、仕様書、マニュアル、パスワードなどを受け取っているはずです。社内に担当者がいれば、契約書と仕様書その他の書類を確認してもらいましょう。

 担当していた社員の退職などにより書類の所在が分からない場合、新たに次の担当者を決めてもらい、担当者から業者へ問い合わせてもらいます。

 会社で使われている電話回線が「IP電話」の場合は、設定確認やVPN等の設定を確認しましょう。

 細かいタスクがたくさん出る作業なので、時間に余裕がある時に、こまめに実施していきましょう。


回線とネットワークの移転作業を予約する


 確認したすべてのサービスについて、提供元に移転作業の予約を入れていきます。

 移転の時期によっては、工事までに3か月ぐらいかかるケースがあるので、次の物件との契約が決まればただちに着手しましょう。


新オフィスのレイアウト、機器の配置を確認する


 移転先の図面を入手します。こちらも、移転責任者から移転先のビル管理会社に頼んで、図面を送ってもらいましょう。建築図面などの等倍のものを入手できると良いでしょう。電源位置なども載っていると尚良いです。電源位置が載っていなければ、現地へ足を運び、実際の電源位置を図面に書き取っておきましょう。

 次に、移転責任者と一緒に、デスクエリアに線引きして、エリアに番号を振ります。「エリア番号」は、什器備品を運び入れる位置を指定するのに役立ちます。梱包した箱に「エリア番号」を書いておくと、現場で指示する作業を軽減できるでしょう。IT機器の配置や配線にも同じことがいえます。

電源エリアと電気容量を確認

 OA機器は大きな電気容量を消費します。コンセントを挿す回線の先につながっている配電基盤が容量に耐えられるかどうかも重要です。万一、容量が足りない場合は基盤工事が必要になり、高額の費用が生じることも。とはいえ、移転先が決まってから細かい部分が判明しがちです。そんな時は、消費電力の大きい機器を1か所に固めず、電源を取る箇所を分散して対応することもできます。

配線の開口部を確認

 OA対応の床であれば、配線作業をするための床の開口部を確認しましょう。天井に配線を通す場合も同様に、天井の開口部を確認して、図面に開口部の位置を書いておきましょう。


搬出路、搬入路を確認、ビルに許可をもらう


 今のオフィスからの搬出路と、移転先の搬入路を確認します。ビルのセキュリティや他の入居者への配慮が必要なので、ビル管理会社に確認し、移転の日取りが決まりしだい許可をもらいましょう。


移転と設営、テストを計画する


機器取り外し・梱包のスケジュールを組む

 移転の日が決まれば、直前にOA機器の取り外し・梱包のスケジュールを組みます。引っ越し業者さんに、こまめに連絡しておきましょう。

移転後のテストを計画する

 新しいオフィスにデジタル機器を設置し終われば、社員の実務が始まる前に、以前と変わらず機器やネットワークを使用できているかどうかのテストを行います。移転先での設営は時間との勝負です。機器を設定しても、実際に使えなければ仕事になりません。テスト計画は必ずスケジュールに入れておきましょう。


箱には「運び入れるエリアの番号」と「パソコンの番号」を


 搬出の前には、各部署で協力してもらいながらすべてのOA機器を取り外し、梱包します。梱包した箱には、運び入れるエリアの番号パソコンの番号を大きく書いておいてもらいましょう。

 当日は、搬出・搬入に立ち合い、各部署と協力して作業を行います。事前に準備をしっかり行えば、スムーズに行えること間違いナシです。


 ブランカでは、オフィスのIT移転を丸ごとお引き受けする「IT移転パッケージ」をご用意しています。「すべてを外注する予算は取れない」という企業様には、IT総務(情シス委託)、レイアウト工事、パソコン設定、LAN工事等を個別でサポートします。

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